権田研究室


1.はじめに


 周波数スペクトルの有効利用というのは電波界における古くて新しい命題である。このため私たちは、情報伝送のための占有帯域幅を狭くすることと、より高い周波数帯の利用の道を開くことに努力を傾注し、輝かしい電波界の歴史を築いてきた。そして現在我が国における無線局は150万を超えるに至っている。さまざまな通信方式の中で 占有帯域幅を積極的に広くしても周波数スペクトルの有効利用に寄与するものとして最近世界的に注目されている方式がある。それが「スペクトル拡散通信方式」である。占有するスペクトルを拡げても特殊な符号が活躍してくれるおかげで時間軸の有効利用が実現するというわけである。

 元々、このスペクトル拡散通信方式は、秘話性があり、ジャミングに強いこと等により、主に米国において軍用通信への応用面から、研究開発が行われていたものである。このため、周波数スペクトルの利用効率が問題となる一般の無線通信を対象とした研究開発は、ほとんど行われていなかった。近年になると、アメリカのQualcomm社がスペクトル拡散方式を本格的に採用した携帯電話システムを提案、それが当時アメリカのディジタル版携帯電話の方式案として検討されていたシステム(TDMAシステム)に比べて数倍程度の加入者を収容できるとあって業界は大騒ぎになった。結局1993年にQualcomm社の提案する方式もアメリカのディジタル携帯電話方式の標準の一つとして認定されるに至った。
 一方、室内程度の空間でコンピュータ端末をネットワークに収容するための無線LANシステムにスペクトル拡散変調が有効であるとの報告も多く出されてきた。1980年代の後半になってアメリカのFCCがスペクトル拡散通信の実験的利用のために認可を出して以来、産業用の周波数(通称ISMバンド)でスペクトル拡散通信を利用した無線LAN製品が多数登場した。


 権田研究室では、そのような「スペクトル拡散通信方式に関する研究」をしています。メンバーは人で明るく楽しく研究しています。


2.スペクトル拡散通信とは・・・・?


 スペクトル拡散(Spread Spectrum : S S)通信方式は、通常の狭帯域変調方式 とは異なり、変調された後の信号の帯域幅を狭帯域変調によるそれに比べてはるか に広くさせる変調方式の総称である。変調信号のスペクトル成分を広範囲な周波数 に広げているためにスペクトル拡散という名称がつけられている。スペクトル拡散通 信の応用例として2.4GHz帯での無線LANシステムなどがある。
SS方式の特徴としては、

   1.変調信号の秘匿性
   2.妨害波・干渉波除去能力

   3.一つの帯域幅に複数のデータ等を乗せ
    て通信するCDMA(Code Division
    Multiple Access:符号分割多重)方式
    が可能

等が 挙げられる。


3.研究内容


 本研究では、スペクトル拡散通信の基礎的検討としてコンピュータ上でのC言語によるシュミレーションを行った。まず、送信側として瞬間周波数が時間に一次的に増加するチャープ信号を発生させ、DFTによってフーリエ変換を行った。次に受信側の参照信号となる前述した信号の時間逆を同様にフーリエ変換して、コンボリュージョンを取る。それを逆変換して特性を観察した。この計算のとき、フーリエ変換DFTを使用したため、計算に時間がかかった。そこで、今後の研究としては、計算時間の早いFFTを用いて研究を行う。


4.メンバー紹介

担当教官   

権田 英功

平成10年度卒業研究生

井田 賢一

影井 雅人

砂流 雄剛


平成10年7月3日 現在