1学科制にする狙いを強調することにより、次第に理解28Yonago National College of Technology 60th anniversary1.組織の変遷2.学科改組出され、同年5月に校長直下の組織として設置された学科再編等検討ワーキンググループで、答申をベースに具体的な再編計画の検討が進められた。図4.1に、再編後の教育課程のイメージを示す。専門分野にとらわれない工学共通の土壌(専門共通基礎科目、数理・データサイエンス教育)から芽を出し、ジェネリックスキルを養成する実践的教養教育(リベラルアーツ教育)等の栄養を吸収して育った後、異なる専門分野を融合・複合して新しい価値を結実するというストーリーである。図4.2に、これを具現化するための科目構成と配置を示す。 まず、1学科複数コース制であるが、学科名称は「総合工学科 (Department of Integrated Engineering)」とした。総合工学科の名称は他高専での先行事例があったが、異なる専門分野を統合して新しい価値を創造するという新学科のポリシーを、英語名の “Integrated” に反映させている。コースについては、現状を大胆に変更する計画には学内からの風当たりが強く、既存の5学科をベースに5コース制(機械システム、電気電子、情報システム、化学・バイオ、建築デザイン)とすることに落ち着いた。ただし、情報分野を強化したコースを設け、これを核に全コースでIT時代に対応できる人材の育成を考えている。5学科を1学科5コースに再編する点は、文科省より再編前後の違いが明確でないとの指摘を何度も受けたが、共通専門科目の増設やコース間の連携など、が得られたように思う。 そのコース間連携の特徴のひとつは、“KOSEN(高専)4.0” イニシアティブで先行して始めた医工連携教育である。平成30(2018)年3月に鳥取県が策定した経済成長戦略では、5つの成長の芽の中に「バイオ・ヘルスケア産業」があげられている。また、本校は平成28年11月に鳥取大学医学部と、そして平成30(2018)年10月にはYMCA米子医療福祉専門学校と包括連携協力協定を結び、共同教育や共同研究等を推進してきた。これらを基に、「医療」「福祉」「介護」をキーワードとした講義やPBLを実施する「医工学・ヒューマンデザイン教育」を通じて、複眼的視野の養成を目指している。 こうした1学科5コース制の教育を効果的に実践するとともに、キャリア形成のミスマッチを防ぐため、学生は2年生の前期に志望コースを決定し、後期からコース別の科目を受講するしくみとなっている。また、1年生と2年生は志望コースによらないクラス編成とし、進級時にクラス替えを実施することで多くの学友と交わり、 平成26(2014)~29(2017)年度は、企画部として、平成30(2018)~令和2(2020)年度は、総務・企画部という名称で業務を行った。令和3(2021)年度は、学校の改組に際し、総務部という名称になった。令和4(2022)~5(2023)年度には、総務部と企画部として二つの部になった。なお、令和6(2024)年度には、総務部と企画部は一つとなり、総務部に統合された。 組織は様々に変遷したが、基本は自己点検・評価、SD・FDなどによる教育改善を担当してきた。年度ごとの担当者は、第5編に掲載されている。【背景】 本校は平成26(2014)年に創立50周年を迎え、今後の50年に向けて、あるべき姿を考える節目を迎えた。高専は地域に密着した高等教育機関との認識から、当時の齊藤正美校長の意向もあり、同年7月に地域の政財界の有識者を招いた教育懇談会が開催され、活発な意見交換が行われた。次いで、平成27(2015)年10月に、この年度に着任された氷室昭三校長を委員長とする将来構想検討委員会が組織され、1学科複数コース制の導入や、入学後に専門分野を選択する大括り入試など、今回の学科再編の核となる改革案が2年をかけてまとめられた。 この間、平成29(2017)年度に向けて、文科省から高専の高度化を推進するための支援事業 “KOSEN(高専)4.0” イニシアティブの募集があり、本校からは「第4次産業革命対応型医工連携教育システムの構築」「新時代のジェネリックスキル養成のためのリベラルアーツ教育」の2件を申請し、両件とも採択された。この中で「第4期中期計画期間の早い時期に学科再編を目指す」ことを目標に掲げたことから、学科再編は必ず実施しなければならない事案となった。【再編の概要】 平成29(2017)年3月に将来構想検討委員会の答申が提第2編 最近の10年第4章 総務部および企画部
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