今回のテーマは、「高専の教養教育―リベラルアーツが高専を面白くする」で、その基調講演に岩本晃代・崇城大学教授から「工業教育の将来を考える―高専・工業高校・理工系大学の独自性と連携・接続」と題して話していただきました。
高専の創設から現在も多くの実践的・創造的技術者を社会に送り続け、高く評価され、現在は海外の制度にまで影響を及ぼしていると話されました。また、教養教育は、工業教育の将来を考えるための重要な視座の一つであり、一貫教育の特色を活かした「高専の教養教育」は、工業高校や大学等、他の技術者養成の学校においても参考になることを示されました。
パネルディスカッションでは、パネリストの杉山明・津山高専教養教育推進室長に「グローバル人材育成のための教養教育」について、角正樹・NTTデータユニバーシティ取締役には卒業生・企業からの視点で、「技術者、研究者に必要とされる「人間力」~リベラルアーツの学び方、教え方~」について、布施圭司・米子高専リベラルアーツセンター長には「今後の社会と高専の教養」と題して話していただきました。また、加藤博和・副センター長からは、米子高専が2016年12月に実施した企業・大学へのアンケート調査の結果を紹介していただきました。
コーディネータから、1991(平成3)年の大綱化以降、教養教育が軽視されていること、高専における教養教育は高等教育機関としての一般教育に重きが置かれておらず、中等教育機関としての普通教育に重きが置かれていること、2011(平成23)年の中教審答申で高専卒業生のコミュニケーション能力が期待値に比べて評価が低いことなどの問題点を指摘し、フロアとの活発な意見交換を行いました。
最後に、高度成長期の労働力不足に備えて即戦力の学生を育てるとして創設された20世紀型の高専から、21世紀型の高専をつくるには、中世以来のヨーロッパ社会の伝統の下でつくられたリベラルアーツ教育論や1950年代のアメリカでつくられたジェネラルエデュケーションの理念を超え、現代の科学論・文明論的ひろがりのもとに構築する必要があり、ジェネリックスキルを身につけさせる教育モデルをつくると結びました。
コーディネータ:氷室昭三・米子高専校長
パネリスト:
岩本晃代・崇城大学教授
山下 哲・木更津高専教授(基礎学系(数学))
杉山 明・津山高専教養教育推進室長(総合理工学科情報システム系(国語)教授)
角 正樹・NTTデータユニバーシティ取締役
布施圭司・米子高専リベラルアーツセンター長(教養教育科(社会)教授、図書館長)
司会:加藤博和・米子高専リベラルアーツセンター副センタ―長
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