“KOSEN(高専)4.0”イニシアティブ

本校は平成29年度、文部科学省が募集した「“KOSEN(高専)4.0”イニシアティブ」に、「医工連携」と「リベラルアーツ」の2件の事業が採択されました。
この事業は各高専の強みや特色をさらに伸ばすことを目的としており、全国の51校の国立高専から96件の計画が申請され、審査の結果、37件が支援対象事業に決定されました。中国地方の高専で2件の採択があったのは本校のみです。
医工連携とリベラルアーツを新機軸とした教育で、次世代の技術者育成に挑戦します。

 

「第4次産業革命対応型医工連携教育システムの構築」

米子市は、医師数もベッド数も全国平均よりかなり多く「医学の都、医都」とも呼ばれています。本校は、この医都の中心である鳥取大学医学部と昨年11月に包括連携協力協定を締結しました。医療・介護機器などの研究開発・実用化を図り、高齢者の生活を支える新たな技術を創り出すとともに、臨床データなどのビッグデータを使いこなして社会をより良くできる技術者を育成したいと考えています。
医学と工学が連携する「医工連携」の研究テーマはいろいろあります。例えば、ファインバブル(機能性のある微細な気泡)の医療への応用では、殺菌作用やヒトへの生理活性作用が認められています。ファインバブルは水中で収縮し、最後は圧壊して気体は水中に溶解しますが、このとき気体の中の分子が活性化され、活性化された分子がヒトの血流を増加させる作用があります。特に、若い細胞を分裂させ、臓器の障害、炎症、老化の促進を抑制するといわれているインスリン様成長因子-1、IGF-1の濃度が上昇するという報告もあります。
現在、米子高専内に「医工連携研究センター」を設置して、医療・介護機器などの共同開発を進めています。
今後は、高専の教員や学生が地元企業と一緒になって、医工連携に関する技術開発や機器開発を行っていき、地域の活性化にも繋げていくことを目標としています。

「新時代のジェネリックスキル養成のためのリベラルアーツ教育」

高専教育における高度な専門性に加えて、学生には周りの人と協調しながら問題を解決できる能力や自分自身の行動をコントロールできる能力、こうしたジェネリックスキルと言われる能力を身につけた技術者とともに、地域企業の国際化に寄与できる人材を育てていきます。
具体的には、低学年へ「地域学」を導入します。これまでの「オープンファクトリー」を拡大し、低学年の学生全員が学ぶ科目として設けます。低学年のうちから地域や地元企業への理解を深めてもらい、地元企業への就職者やUターン者の増加を目指し、地方創生にも繋げたいと考えています。
高学年へは「経営・国際教育」を導入し、新時代に対応できるジェネリックスキルを全ての学生に段階的に身につけさせます。
本校は、全国に先駆けて「リベラルアーツセンター」を設置しています。リベラルアーツ教育を実践し統括するための活動拠点であり、その活動を地域・社会に発信する広報や、リベラルアーツについて研究する役割も担っています。
全ての学生・教職員が教養やジェネリックスキルを高めるために活用できる「リベラルアーツライブラリー」を整備しており、これをさらに充実して、図書館における貸出冊数の増加を目指しています。
なお、図書館は一般市民の方にも開放しておりますので、お気軽にご利用ください。

この鳥取県西部地域では高齢化に対応することが極めて重要であると考えています。医工連携では、老化に伴う身体的機能の低下のみに捉われることなく、持続もしくは向上する心理的機能、社会制度や地域環境など、エイジングを包括的に理解することを通じて、年齢や状態に関わらず個人の生きがいを創出するとともに、その生きがいが尊重され活用される社会づくりに貢献したいと考えております。
一方、教養教育を充実することで、学生に「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」などを身につけさせ、世界と関わり合え、地域づくりができる人材の育成を図りたいと考えております。
この取り組みの大きな目標は、地域に根差した高専づくりでありますが、地域の全ての人々が心豊かに生活できるよう学生と住民が協働し、地域が抱える課題を解決する方法を見出すとともに、地域で活躍し起業できる人材育成を図ることにあります。
鳥取大学医学部、鳥取県、米子市、境港市をはじめとする連携機関と、継続的な協力体制を維持し、鳥取から世界に向けて新時代を創造するエンジニアを輩出していきたいと考えています。

上記の内容について、中海テレビなどで放送されている「米子高専 知的セミナー」で、「学科紹介/新たな取り組み」(2017年9月)として広報しています。鳥取県民チャンネルコンテンツ協議会のホームページで視聴できます。

本校は、平成29年度の2事業の採択に引き続き、平成30年度においても「女性技術者活躍推進プログラム」の事業が採択されました。今回は49校の国立高専から78件の計画が申請され、審査の結果、34件が支援対象事業に決定されました。平成29年度を含む2年間で計3事業が採択されたのは全国でもわずか3高専です。

 

「山陰とっとり・しまねの企業とつくる女性技術者活躍推進プログラム」

この事業の目的は、女子中学生の理系選択への関心を喚起する取り組みによる裾野拡大、女子高専生への女性ロールモデル情報提供により、地域に貢献する女性人材を一気通貫で育成する循環システムを構築することにあります。
鳥取県は、人口最少県(56万人)であり労働生産性で全国46位、人口減少率でも全国15位(約0.68%)と労働人口減少が進んでいます。この地域の社会と経済の健全な発展には、女性のエンパワーメントが欠かせませんが、その取組は非常に遅れています。本校では、この状況を改善するために平成29年11月に男女共同参画推進室を設置して、地域産業の活性化を担う女性ロールモデルを生み出すキャリア教育体制を確立するための取り組みを始めています。
本事業の実施によって、地域の産業と文化を理解し、活躍する女性を育てる教育と女子の理系進路選択を促すシステムの構築を進めます。

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